2017.06.10
今回は、実際にどのように遺伝子治療を行うかについてお話しようと思います。
肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん・・など、がんのできる部位によって、正常な細胞にはあってもがん細胞には欠損している遺伝子(がん抑制遺伝子)の種類が統計的にわかっています。このがん抑制遺伝子を患者さんごとに、1つあるいは複数個組み合わせて遺伝子ベクター(運び屋)に入れた薬剤として投与することになります。
遺伝子ベクターに入れられた遺伝子は、熱に大変弱い物質です。
したがって、薬剤が通常室温よりも少しでも上がってしまうと失活してしまいますので、保管は、マイナス80度のディープフリーザによって行います。
そして投与は、1バイアル(瓶)約2ccの薬剤を生理食塩水と一緒に局所または、静脈に注射します。局所注射では、ガンが皮膚近くにある場合(皮膚、筋層、リンパ節)には見た目の劇的な変化も期待できます。また私たちの体には門脈系という血液が肝臓に集められる重要な経路があります。静脈投与した場合、遺伝子治療薬剤も門脈系で肝臓に集められますので、肝臓に転移したがんには強力に効果を発揮します。
がん遺伝子療法は、抗がん剤との併用も効果的です。
抗がん剤は2クール3クールと回数を重ねるごとに薬剤耐性や免疫の低下といった問題がでてきますが、少ない回数の抗がん剤投与でがんをある程度小さくしてから遺伝子療法に切り替えることでがんを消滅させることを視野にいれることも可能になってきます。
これまでは大学医学部の研究分野に過ぎないがん遺伝子治療でしたが、現在は臨床的に確立し、国内でも副作用の少ないがん治療法の1つとして実施しているクリニックも増えてきています。