2020.07.15
「腎機能を調べたい」というときは、何を調べるでしょう。おそらくは、血液検査でeGFRやCre、BUNを調べると思います。
「糸球体」という、腎臓にやってきた血液をろ過する部分がダメージをうけるとeGFRは下がり、CreやBUNが血中に漏れてくるからです。
慢性的に腎臓が悪い方は大概、これらのマーカーの値が悪いです。
ところで、カリウムという物質があります。
これは生き物の細胞の中にたくさん含まれていて、人は常に食べ物などから補給しつづけなければならない、必須の電解質です。
カリウムは、腎臓でおしっこの素(原尿)から体内に再吸収されます。
では、上で書いたマーカーの値の悪い人は、必ず同じくカリウムの値も悪くなるでしょうか。
答えはノーです。
カリウムは、腎臓の「尿細管」という部分で再吸収されるので、糸球体と尿細管は別々にダメージを受けることは大いに考えられるわけです。
ですから、慢性の腎臓病でも尿細管の機能は温存されていることはよくあります。その逆もあります。いわゆる腎機能は悪くないのに、低カリウム血症となっている方がいるのはこのためです。
尿細管は腎臓にやってくる血が足りない(=虚血)のときにもっともダメージを受けるといわれています。
虚血は色んなときに起きますが、よくあるのは、「脱水」です。また心不全のある高齢者の方は特に夜間から明け方にかけて虚血になりやすい、といわれています。
尿細管がダメージを受けると、カリウムを再吸収できないわけですから、低カリウム血症を起こします。カリウムは細胞膜の電気的なバランスを保つのに非常に重要な役割を果たすので、低カリウム血症によってけいれんや、不整脈を起こします。不整脈は心房細動や心室頻拍などのことをいいますが、簡単に言うと、これは死ぬ病気です。
さくらクリニックでも、在宅訪問診療の患者さんに対しては、慢性腎臓病の方だけでなく、そうでなくても不整脈をもっているような方には、血液検査でK(カリウム)も必ず調べるようにしています。もしある程度の期間カリウムが低いことがわかれば、アーガメントゼリーなどの、Kの再吸収を促進させるお薬で治療する、といった流れになると思います。